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一物一価の法則

更新日:4 日前

「一物一価の法則」という言葉を初めて聞いたのはいつだったでしょうか。中学校の公民の授業だったのか、それとも商業高校で商業を習ったときだったのか、正直なところ記憶は曖昧です。ただ、そのときの印象は、「ああ、そんなものなのね」という程度でした。


たとえば、みかん1個が熊本で100円、福岡で150円、大阪で200円だとしたらどうでしょう。熊本で仕入れて福岡や大阪で売れば、移動や保管にかかる経費を引いて利益が残る限り、これは儲かりますよね。こうした行為は商売の基本でもありますが、後になって商品先物取引を知った時、「これがアービトラージ(裁定取引)の原始的な形なのか」と知り、「なるほど、こういう仕組みなのか」と改めて得心しました。


場所や時間の違いによって、同じ商品でも価格に差が生じる。そのとき、その差を埋めるように裁定取引が行われる――これこそが、一物一価の法則の実践的な一面なのです。


 

裁定取引とその種類


アービトラージ(裁定取引)とは、同一の価値を持つ商品の一時的な価格差(歪み)が生じた際に、割高なほうを売り、割安なほうを買い、その後、両者の価格差が縮小した時点でそれぞれの反対売買を行うことで利益を得る取引のことを指します。この基本的な仕組みが、資本主義経済における市場価格の調整役として機能しています。


裁定取引には以下のような種類があります。


  • 地域裁定取引(空間的裁定取引)

異なる地域や市場で、同一の商品が異なる価格で取引されている場合、安い市場で買い、高い市場で売る取引です。


例: 熊本で安く仕入れたみかんを福岡や大阪で売る。あるいは、ロンドン市場とニューヨーク市場で価格差がある商品を取引する。



  • 時間裁定取引(時間的裁定取引)

価格の変動が時間差で起こる場合、将来的な値動きを予測して利益を得る取引です。


例: 先物価格が高く、現物が安くなったときに、先物を売り、現物を買う。



  • 商品間裁定取引(裁定の進化形)

異なるが関連性のある2つ以上の商品や資産の価格差を利用する取引


例: 金と銀の価格連動性を利用して一方を買い、一方を売る。または、株価指数先物と現物株の価格差を利用する。


どれも、同一価値を持つもの同士に価格の歪みが生じたとき、「割高を売り、割安を買う」を行う取引であり、その目的は価格差の解消から利益を得ることにあります。



 

ブラック・ショールズ式と効率的市場仮説


裁定取引の考え方は、金融市場でも広く応用されています。たとえば、オプション取引で知られるブラック・ショールズ式は、価格のズレを利用してリスクゼロのポートフォリオを構築し、適正な価格を導き出すモデルとして有名です。このように、裁定取引の概念は、金融商品の適正な価格形成や市場の効率性向上に大きく寄与しています。

※ブラック・ショールズ式はストラドルで直接的に利用されていますが、理論価格と市場価格の乖離を評価する間接的なツールとして利用され、裁定機会の検出に寄与します。


裁定取引は、価格の歪みを解消し、適正な価格を形成する重要なメカニズムの一つです。そして、こうした市場調整が進むことで、効率的市場仮説が示す『情報が価格に迅速かつ正確に反映された状態』に近づくと考えられます。



 

これらの考え方は、現代の金融市場を理解する上で欠かせない基本的な知識です。ただし、「価値(Value)」と「価格(Price)」という概念や、裁定取引が「つなぎ」や「ヘッジ」とどのように関係しているのかは、まだ触れきれていません。


次回の投稿では、これらのテーマをさらに深掘りしていきたいと思います。

ぜひお楽しみに。


加減 拝


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